加速度
〜 Kawasaki AR50 の想い出 〜



時は、'83年頃。。。

そういえば、その頃って50ccスポーツバイクの花盛りだったよな。

各4メーカーから揃い踏み・・・

HONDAからは、MBX50

YAMAHAからは、RZ50

SUZUKIは、RG50γ

そして、Kawasakiからは、AR50・・・ 

どの雑誌でもこぞってハイパー50ccの性能比較記事を掲載していたっけ

自分自身のバイク熱はこれらに煽り煽られ

まさに加速度的に熱くなっていった

当時の自分にとっては、それらはまさに手に届きそうな「夢」だった

中型バイクなんか遠い雲の上の存在

何よりも最初、中型免許の壁を突破しないといけないし

だから、こいつらが今のところの自分の「夢」であり

「目標」



ある日、ひょんなことから友人のAR50をしばらくの間、借受ける事になった

当分乗らないから、と

その申し出を断わるほど自分はバカではない

快くその申し出を承諾して’あげた’

その時何故だか自分にはツーリングに出るという概念がなかったらしい

どこへ旅に出たといった記憶はない

あ、そうだった、その頃は自分自身の「夢」に向かって突っ走っていた頃だ

ということは、そこまでの「ゲタ代わり」だったようだ

それでもそこへの行き帰りは束の間の至福の一時だった事には間違いないであろう

行き帰りの「環七通り」がスピードトライアル

タコメーターとスピードメーターをにらめっこ

おぉっ!100km/h出たぜ!

一人メットの中でニヤけている・・・



初めての事故も経験した

タクシーにいわゆる’オカマ’を掘らされた

まだその当時、タクシーの危険度は知る由もなかった頃

目の前のタクシーが客乗せの為に急停車!

むろん止まれる筈もなく・・・・・

幸い自分自身に怪我はない

タクシーの運ちゃんは自分に非があると思ったのか

殊更にこちらを攻めるような事はせず

むしろ、その場から逃げたいといった様子であった

大丈夫か?身体は平気?気を付けてね、じゃぁ行くけど、いいね

確かにそんなに大した事はなかったのでそのまま行かせた

バイクに近付いてまじまじと眺める

あらら、キャスター角がすごい・・・最新レプリカ並だ

そう、Fフォークが手前にぐにゃ 直立に

それでも何とか走れる様だ

帰ろうとした頃にどこかからサイレンが・・・

誰かが#119したのであろう

事情を説明し、無事な事を告げてお引取り願った

帰り道、頭の中は友人への言い訳を考えていた事は言うまでもない



結局そのARは友人から格安で譲り受けた

友人はもう乗らないからということで

フォークは曲がっているものの、その頃の自分は無謀にも

そのまま問題なく乗れると判断し

むしろ自分の愛車になる事に喜びを噛み締めていたのであった

初めての「相棒」



それからというものの、嬉々としたバイクライフが始まった・・・

・・・のも束の間

ある日。。。

散々いつもの’スピードトライアル’をし終えて・・・

信号待ちから、普通にスタートを切ろうとしたその瞬間

ガックーン!!!

なんだかわからない衝撃とともに急ブレーキが掛かったように

前方に投げ出されそうになったのを必死で堪えた

何事が起こったのか当時の私は全く想像もつかなかった

再始動をしようとするが、キックが下りない・・・

明らかに、焼きつき

延々そこからバイクを押して家路についた

普通に歩いて20分くらいのところ

どれくらい掛かったのだろう・・・

せめてもの救いが、軽い50ccバイクであった事

恐らくその道中ずっと自分の頭の中は「??????」であったことだろう

その日が公道を走った最後の勇姿であった



とある友人が、ARのスペア・シリンダー、ピストンを持っているとの事から

それらを譲ってもらい、見よう見真似で交換してみよう

開けてみると、ピストンピンの両端のサークリップが脱落し

巡り巡って燃焼室内に入りこみ、ピストンリングをぶった切り、ロック!

そんな状況だったみたいだ

ホントにホント見よう見真似の修復作業が始まった

友人からどこ製のだかわからないようなボックスレンチセットを借りてきて

せっせとヘッド、シリンダー、ピストン等をはずしていく

作業自体は簡単簡単

だって、2ストの50ccだもん

パコッ、パコッ、パコッ!と外れていく

そして、新しいパーツを、これまたパコッ、パコッ、パコッ!と・・・

これで良いわけはない

そして、良いわけはなかった・・・

エンジンはキック一発で目覚めた

生まれて初めて、エンジン再生させたわけだから

狂喜乱舞!アリャリャ\(^o\) (/o^)/コリャリャ


さて、実走となると。。。

力なくエンジンが回ってくれない

ふと、気が付いた

シリンダー周辺から圧縮漏れのようなエア抜けが・・・

しかし、その当時の私にとって

それは大した問題ではないと思いこんでいたし、想像もできなかった

それこそが大問題であろう事など



端から見たらこれ以上のはっきりした原因はないはずの私にとっての原因不明で

再びARが公道を颯爽と走る姿を見る事は二度となかった

そういえば、あれって最後どうしたんだったっけ・・・?

それくらい、昔々のおはなし

おしまい


'01,03,17
by cow-boy...






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