本格始動
〜 kawasaki GPz400F の想い出 〜
('01,4/27up)

 その”時”はある日突然やってきた。忘れていた何か大切なものをハッと我に返って思い出したかのごとく・・・。そのはっきりとしたきっかけ、動機は定かではないのだが、「やばい!早く目覚めねば!」まるでそんな思いで本能的に立ち上がったのではないか・・・。突如、二輪の中型免許取得の為に教習所の門を叩いた'88年の春。。。

 原付免許を取得したのは高校2年の頃。ほんの少しの短い間であったが原付バイクを乗りまわしてはいた。20歳の頃、働いていた私は収入があると当然の事ながらそれらの使い道を模索し始める。仕事上でも使い道があると思い車の免許を取得する。当初いずれは二輪免許も!とは思っていたのだが車の方を先に取得してしまうと当然の事ながら自分自身の愛車が欲しくなってしまうのが世の常。その為にがむしゃらになって働き、念願の相棒のハンドルを握るまでに至った。
 悲しい事にその頃にはバイクの事などはまるで眼中になかった。とにかく車の運転が楽しくてしかたがない。休みという休み、それだけに止まらず夜な夜なあちらこちらと走りまわる日々が続いた。仕事上においても連日の足は全て車での移動、そんな日々がしばらく続いた。
 するとどうだろう・・・悲しいかな自分が住んでいるところは大都会東京。今や常識の「渋滞」が否応無しに自分の眼前に立ち塞がるのである。どこへ行っても渋滞渋滞。車を運転するようになってから、それまでは全く知らずに過ごしてきた「肩こり」にも悩まされてきた。ゲンキンなものでいつしか車の運転が苦痛以外の何ものでもなくなってきた。そしてそんなある日。。。

 仕事の合間を見てそこから通えそうな教習所に入所手続きに行く。窓から見えるその教習風景に自分の極近の未来を重ね合わせてみる。誰もが最初は囚われる思い「果たして自分はできるのだろうか・・・」。勿論私もご多分に漏れず最初の教習では口から心臓が飛び出るほどの緊張をした思い出がある。教習バイクはYAMAHAのFZ400N。バカでかいガード類と補助ランプ類が、いかにもこれからバシバシこけるぞぉー…もとい、しっかり教習するぞ!という気持ちを奮い立たせてくれる。それからしばらくの間、仕事の合間を見つけては教習に通う日々を送っていた。今思い返しても「苦痛」という言葉は思い浮かばないところ見ると取り敢えずは順調に事が進んだものと推測する。自分って天才?!一回の取りこぼしもないままに順調な教習を経てめでたく「自動二輪中型限定(現在で言う、普通二輪)」を取得した。

 無事に免許を取ってしまうと例の虫が騒ぎ始める。。。「自分の愛車をー!」しかしその時の自分の周りには頼るべくバイク仲間がいない。とりあえず雑誌などで店などの選定をしながら楽しい”バイク選び”に興じるのであった。
 どんなバイクにするかは既にターゲットを絞り込んでいた様だ。すごく近い将来的に限定解除(現、大型二輪)を企んでいた為にその愛車選びにもガタイが大きく何かにつけて大型バイクに乗るための練習になる様にとの事から自ずとすんなりと決められていったように思う。そしてその頃の自分の思い込み、そしてこだわり(?)…バイクは「男、Kawasaki!」
 そして、バイク乗りとして本格始動の為の愛車捜しも佳境に入ってきた。

 ある中古バイクの雑誌をペラペラと見ていると、ふと目に留まったある1台。そのバイクは、"男"kawasaki GPz400F。。。
 狙いすましたように速攻アタック開始。すぐそのショップにアポを取り、出掛ける。場所は自宅からさほど遠くないところにあった。恐らく今その店を見たら胡散臭そうで近寄らなかったであろうその店構え。店の中にはおよそディスプレイしているといった感じはなく、バイクやら何やらをとにかく詰め込んでいる!といった表現が適当であろう。まるでジグソーパズルみたいに敷き詰められているバイクを縫う様に店内に踏み入っていく。店の人がどこにいるのかわかんねぇー!埋もれている様だった。
 早速お目当てのバイクを見せてもらう。しかし見せてもらったところで自分には判断がさっぱりつかない。しかもそんな店の奥の方にあるバイク。すぐに外へ出せるはずもなく、恐らくエンジンも掛けてもらってなかったのではあるまいか。しかし最初に見てしまったものをどうやら”親”と認識してしまったようだ。バイク屋のオヤジが「良い」というのだから良いのだろう。そして「ここで決めてくれたらこのヘルメットも付けちゃおう!」とそのオヤジはそこいらへんの棚から埃まみれのなんだか使い古されたようなメットを出してきた。とにかく自分にとっては全てが新しいこと。おぉ、これはラッキーとばかりに速攻でハンコを押してしまったようだ。

 とはいえ容易く決めてしまった事には後悔はしていなかった。納車の日を指折り数えて待っていよう・・・そう思っていたとき!「今からバイク持って行っていいですか?」とはその店からの電話。そりゃぁそうだろうなぁ〜あの店の様子からじゃ、売れた物はとっととサバきたいよな。置く所ないもんな、あの様子じゃ・・・。かくしてナンバーよりも一足お先に我が家に相棒がやってきた。そしてそれから数日のちにナンバーもやってきて、晴れてバイク乗り本格始動と相成ったわけである。
 今から思えば果たしてそのGPzの程度はどんなものだったのか定かではないのだが、なんでもそう!「住めば都。乗れば駿馬!」それからのワクワクに胸躍らせて地に足が着いていなかったであろう事は想像に容易い。





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