ミニバイクレース参戦記
『サーキットのくらげJr』初陣の巻

 03年7月5日(土)午後7時前後、私ら家族は東名・用賀ICを目指し環八通り内回りの車中にいた。
 車の荷室には浮き輪やらピクニックテーブルやらレジャーシートやらビーチパラソルやら子供用プール?やら・・・水着やら・・・。傍から見たら概ねこの週末から各海開きを当てこんでのいわゆる「家族で海水浴」なんだろうなと思われるところだが、ただ一般的な海水浴家族とちょいと違ったところは、そのようなレジャーグッズに混ざってな〜んでだか「ヘルメット」「レーシングスーツ」「ブーツ」「グローブ」等々、一般ファミリーとは到底あまり縁のない品々も肩身も狭く積まれていたことであった。

 そう、この日はかねてよりこの日の為に準備に準備を重ねてきたことの集大成を披露する日であった。
 ひょんなことから持ち上がったミニバイクレース参戦計画。それに伴い結成されたレーシングチーム「サーキットのくらげJr」。自らは決して乗らず監督業に専念すると言い張る我らが親愛なる総監督「シゲ吉」どのの元、如何なる時も冷静沈着...かと思っていたら自らのライディングに陶酔するあまりピットサインを時として見落としがちな御茶目な「殿」さま...は今回スタートライダーを務める。まだまだその若さからか?思いだけが先走る傾向ではあるが時としてアテント?!恐らく壷にハマったときの瞬発力はピカイチであろう「J太」...は第2ライダー。こまごま至れり尽せり今回はなにからな〜にまでお任せしちまっていて私らライダーはただその場へ行き、用意してあるマシンに乗って走り出す...そんなワークスライダー待遇のような環境をいつも用意してくれちゃう「まーべりっく」どん。人呼んで、Jrのギー・クーロンたぁ彼のこったぁ―っ。今回はライダーではなくチーフメカさんとしてサポート役に徹してくれた。そしてJrのスーパーエースライダー...を何故に栄えある初陣に出動させないのか?!とお思いの人もいるかもしれないが、そこがそれJrの良いところ?譲り合いの精神というか...次回にはきっと”あそこ”に上がってくれるであろう「ぴらっち」も今回はヘルパーさんに。そして第3ライダーは旗揚げ兼ねた秋が瀬シェイクダウン時に3回もコかせたcow-boyこと私が勤めさせていただくことになったのであった。

 ちなみにチーム発足から今までに至る経緯などはリンク先の「ダンシング・レーシング」をご参照あれ。

 ■http://diary4.cgiboy.com/0/mini_mini/

 さて話を元に戻すが、何故にレース決勝前日の土曜日に我が家が民族大移動を行なっているのか。それは、Jrの影のオーナーであらせられる「つき」さまのご好意により、東伊豆の川奈にある駐屯地(別荘とも言う)をご提供下さるというお申し出をありがたく受けての前日入りの為であった。
 そもそも当日のレースには私は単身で乗り込むつもりであった。ところがサーキット周辺のロケーションは、「是非ここで海と戯れて下さい」と主張しているようなところ。コースの隣には砂浜があり、サーファーが波乗りに興じていた。
 そこで何気にうちのカミさんにその旨言ったら、まさかとは思ったのだが食い付いてきたのであった。何気ない一言が、なんだか後に取り返しのつかないことにならないといいのだが、なんとなく危惧したものであった。あくまでも「海水浴目的」オンリーであり、決してレースの応援なんてぇものは眼中になし!「オトーチャンが同じ所をぐるぐる回っているのを見てもね〜。仕方ないしね〜」とは?!だから天気が悪そうだったら、海水浴できそうもなかったら行かぬと。まぁそれならそれで私もレースに専念できるからむしろその方が・・・?などと思う傍ら、な〜んとなく応援してもらいたいような気もしなくもない。複雑な心境であった。ま、どちらにせよ、当日の天気次第ということでファジーに構えていた。
 事前の予報によると、降水確率は確かに悪い。ただ雨は朝晩を中心にというものだったので、あわよくば日中少しでも回復してくれたなら・・・という希望的観測を伴い「家族でGo!」となったのであった。
 「ま、どうしても海に入れないようだったら、仕方ない、トーチャンの応援でもしてやろか」と。ん・・・ま、いっか。
 そんな複雑な心境の私とは裏腹に、車中のカーステからは陽気で且つ時に勇まし曲がガンガンに流れていた。「ヒーロー戦隊」ものの主題歌やら「ハム太郎」から、お笑いテツ&トモの「♪なんでだろう〜?」まで・・・ま、いっか。お子ちゃまモードのBGに乗って我らは川奈を目指してひた走ったのであった。

 さて、結局目指していた東名・用賀IC周辺がやたらと混んでいた為に東名道に乗ることを諦め、第三京浜ルートからの海沿いルートに切り替え、ほぼ下道のような行程を辿り現地川奈の駐屯地に合流できたのは午後11時を回った頃であった。

 先にこの駐屯地に乗り込んでいたのはシゲ吉総監督どのとJ太。そしてレースの応援にわざわざ遠路遥々名古屋から愛車のジェベルでとことこ下道をやってきた「ぱとらっしゅ」が・・・死んでいた。厳密に言うならば「できあがっていた」。我らが到着した頃には既になんの酒だか知らんが空き瓶がそこいらに転がっていたのは何を意味していたのだろうか?と。私が風呂に入っている間にWCで<<ピー>>し、そのままテラスへ出て<<プー>>とかな〜りの時間意識がないままに放っておかれたのであった。
 ま、この夜のできごとは、あ〜んなこととかこ〜んなこととかあったのだが、本人の名誉にも関わることなので敢えてココでは伏せておこう。但し、ひとつ言えることは、あまり子供の教育上は・・・ごにょごにょごにょ。

 さて、天井にパラパラ当たっている雨音で目が覚めた。
 時計は午前7時を指していた。
 今日だよなぁ。
 やっぱ今日だよなぁ。
 今日レースだよなぁ。
 うげっ・・・。
 窓の外の降りしきる雨を見て、正直なところを一言で言うならば、「やりたくねぇ〜」かと。勿論そんな悪い意識はさっさと振り払い「やるぞ!やるんだ!」と自分自身に言い聞かせた。
 後にこの雨は実は我々にとって何よりの強力な味方となるであろうことなど、このときの眠気眼の自分にはそこまでの思いは巡らなかったのであった。


 忘れ物探しでちょいと出遅れた私ら家族部隊だったが、午前9時ほんのちょい過ぎに湯河原の戦場「シーサイドGP」に到着した。なんというか、お気楽のほほ〜んと構えていたら、おっとっと、なんとなく雰囲気が予てより練習していたいつものそことは明らかに違う空気が流れていた。お遊びレースとはいえ少なからずの緊張感やら何かが張り詰めているように感じられた。雨露凌ぐテントを張り〜の、その中でマシン整備し〜の...おぉ、これはまるでレース前のパドックではないか!と(爆)。
 そんな中に、我らがチーフメカのまーべりっくは午前7時半には乗り込み陣取っていたという。素晴らしい〜♪その時間、川奈前夜入り組は.....やっと起き出した頃?も、も、も、もうしわけないやら...。
 他にもほとんどの主要メンバーは勢揃いしていた。殿さまに身重の奥方Mにゃんさん、ぴらっちと...。我が家の連中は速攻隣接のマックへ朝マックしに行った。

 その日のタイムスケジュールとしては、9時から12時までが専有練習走行時間に当てられていた。もちろん希望者によるものだが。
 9時になったら早速みんな走り始めた。前夜からの雨もまだかなり降り続いていた。当然コース上はヘビーウェット。そんな中を、おいおいそんなにマシン寝かせていいんかよー?!と思える走りを見せつけられて、もしかしたら自分らはとてもヤバイところに迷い込んできてしまったのではないだろうか?まだまだこんなところへ来るには早過ぎたのではないか?などと柄にもなく怖気づきそうになったりして。と、そんなことで怯んでいてどうする?!成せば成るさと自分自身を叱咤激励した。
 いつまでもボケボケしていても仕方ない。慎重にマシンを壊さないように練習走行を始めなくては。
  監督に促されライダー衆はレースの受付を済ませた。その間にチーフメカさんを始めみんなでてきぱきマシンのセットアップを始めた。のだが、どうやら重大な事が発覚したようだった。ドライ用タイヤから降りしきる雨を想定して準備良く用意していたレインタイヤに履き替えようとしていたら、どうやらそのスペアホイールにセットされているFブレーキディスクが歪んでいたらしい。このスペアホイールは某オークションで中古品を競り落としたのだが、まさかディスクに歪みがあるとは知る由もなく...。あれ?前週ここで雨中の練習走行をJ太が行なった筈なのだが、そのときは歪の影響はなかったのだろうか?とふと思ったりもしたが、まぁいい、勿論すぐに付け替え作業を行なってくれた。
 ちょっとしたハプニングはあったものの、我がJr号にはこの日こうなったときの為!のウェットタイヤに履き替えられたのであった。
 他のピットを何気に見てみる。
 結構ドライタイヤのままのマシンが見受けられる。それは後に雨が上がるであろうと予想し、賭けに出たのか?はたまたレインタイヤまで用意していなかったのか?は定かではないが。この選択...はたまた選択しようがなかったことに対して出された答えに、このあとのコース上でそれを垣間見た私は思わずニヤリとほくそえんだのであった。

 .....もしかしたら、イケるかも?!

 せっせと降りしきる雨の中で手際良くマシンのセットアップに励んでくれているサポート隊の手前、こっちも気合を見せないと!...早々にレーシングスーツに着替えた私。そう、やる気なのよ、やる気なのよ!と。
 そんなわけで私が最初にコースインをさせてもらう。

 レインを履いているとはいえ、もちろん油断大敵なわけであり、慎重に慎重を重ねつつ、レース前にマシン壊してなるものか!...しかしだからといってこれから始まるレースに向けての手応えをここらで得ておかないといけない。常にマシンと、タイヤと対話しながら着実にラップを重ねていった。マシン良好。フルノーマル仕様の為、直線はあまりに遅い。レーシングチャンバーを入れたい!と声を大にして訴えていたものだが、しかしその分とても扱いやすい仕様ということも言えるのであった。上での伸びの犠牲で下がスカスカってことはノーマルだけに全くない。下から澱みなく上まで谷間なく回ってくれるのであった。つまりこんなコースコンディションのときにはリスクがより少なくなる仕様と言っても過言ではない...たぶん。
 そして何よりもコレコレ!コイツの恩恵をひしひしと感じたのであった。

 .....レインタイヤ

 へぇ〜、レインってこんなにも滑らないものなのか?!まさに目から鱗状態であった。そりゃそうだ。あの雨中のシェイクダウンの秋ヶ瀬ではドライタイヤしかなかったので雨が上がるまで待ちそれから走り出したのに、速攻の一発目から二発、三発と立て続けの体たらく。ウェット路面でのドライタイヤの恐怖を存分に味わった私である。もしこのレース当日のこのコンディション下で.....もしレインタイヤがなかったならば.....マシンが大切!速攻棄権!総監督はそのように述べていたのだが.....あり得ないとは言い切れないな、と?
 正直なところ他のドライタイヤ装着のマシンがあちらこちらでスッテンコロリンやっている様を見ていると、ウェットタイヤのアドバンテージを感じずにはいられない。

 むしろこのまま雨よ、最後まで降り続いてくれろっ!

 ...結構マジに強烈にそう願った私である。

 しかし、実際にコース上を走っていても、さほどのハイペースではないようなマシンの後について走っていても突如目の前でそのマシンがツルリっと。あわや自分もその転倒したマシンに突っ込み多重クラッシュするところだったりと...。こりゃレインタイヤによるアドバンテージはあるものの、他車と絡まない巻き込まれないようにすることが「生き残る上で」の最重要課題だなと思った。うぉっと、最終のS字で目の前のマシンがズッコケてコース上に横たわっている。寸でのところでかわし、イン側のダートへ乗り入れる。するとそこは雨で田んぼ状態だったので脱出の際にリアが思いっきり滑ってあわや田植え作業に従事するところであった。ホント、自分自身以外にも周りの状況にも細心の注意を払わないと生き残れないなとつくづく思った。

 ホームのところにラップタイムボードがあって、そこを通過する度に自動計測によるラップタイムが表示される。走っている方にも一瞬自分のタイムを見ることができる。但し、あまり見入っているとすぐに迫り来る1コーナー進入に間に合わず海の藻屑と消えてしまうので注意しないといけないが。自分のタイムをちらりちらりとチェックしながら徐々にタイムアップを図った。他のマシンなどに絡んでしまいなかなかペースが上がらなかったが、抜きどころのポイントを決めてスパスパやっていたら次第に調子が上がってきた。ウェットコンディションで35秒台だったのが、最終的には33秒台に入れて自分の走行を終了できた。

 とまぁ寝惚けた頭を叩き起こし、腑抜けた身体に喝を入れるための本日最初の走行を終えた私は、マシンをJ太に託した。
 J太、コケる。
 続く殿さま、コケる。
 やばい、私がなんだか妙に取り残されたような孤独感を感じてしまった(笑)。というよりも今やらない分、本番でやらなければいいのだが.....と。ちょっと心配になってしまった。ちなみにマシンもライダーもコケによる影響はほとんどなし。ホッと胸を撫で下ろした。

 いよいよ決勝に向けてのスケジュール進行が始まった。
 まずはライダー、ピットクルーを集めてのブリーフィング。今後の予定やら注意事項やらの説明がなされた。
 いよいよ、いよいよ。嫌でも気分が盛り上がっていく。それに伴い緊張の度合いも増してくる。ふと見たJ太の顔が今だ嘗て見たことないほどに強張っていた。ボソッと「いよいよですなぁ〜」緊張しまくっているその顔を見たら、笑っちゃいけないのだがとても笑えた。
 さてこのシリーズ戦も回を追うごとにエントラント数がうなぎ上りらしい。今回は私らJr号が走る「スポーツ」クラスは全17台。他のクラス(ターミネーターズ・スポーツ80)を合わせると.....何台だっけ?恐らく30台弱ってところだろうか。この狭いコース内をこんな台数が走るなんて.....想像しただけで.....想像したくなくなる。

 そんなわけで、引き続いては予選開始である。
 各クラスづつによる15分間の走行でタイムを取っていく。
 各マシンには予め「トランスポンダー」という計時用発信機が取り付けられていて自動計測されていく。
 15分を3人で分けて走ろうかと言ったが、それだと慌しいだけできっとタイムも出ないだろうと。とりあえずその時点でノーコケの私に白羽の矢が当たり、私一人が予選を担ったのであった。
 いくら私が遅いとは言っても、やはり下には下がいてくれるわけで、おっ!結構これはイケるぞ!のペースで周回しているとどうしても引っ掛かってしまい思うようなクリアラップが取れない。あまりにドン詰まってしまうと一時ピットインし、クリアが取れるタイミングを計り再びコースインする.....のだが、どうにもこうにも思うようにいかない。そうこうしているうちに15分間などあっという間に過ぎ去ってしまった。
 チェッカーが振られ、パドックへ戻っていくとみんなが集まってきた。
 「7位っすよ〜」
 どうやら予選クラス7位らしい。17台中の7番目。タイムも練習走行時に出した33秒台。ま、とりあえず面目躍如ってところで。とはいっても、このウェットコースの中をドライタイヤで臨んでいるみるからに速そうな人達が控えているってところが手放しでは喜べなかったのであった。ましてや上は30秒台だってさっ(唖然)
 全クラスの予選が終わり、決勝グリッドが決まった。
 純粋にタイム順のため全クラスでの総合順位で、13番目のグリッドとなった。
 決勝スタートは、予定の14時から13時30分スタートに予定繰上げで行われるようだ。各マシン最後のチェックに余念がない。スタートまでの時間もほとんどないようなものなので、わさわさのうちにマシンをグリッドの方へ運んでいく。
 いよいよ決勝スタートなのだな.....。

 気分が盛り上がっていく上でのもう一つの要因は、続々と駆け付けてくれた応援団の方々のお陰でもあった。
 ツーリングクラブの方からは、「あっち」さん、「ヨッシー」、「ばったもん」「ダサMac」。そして「行こうよ!8耐!」のサイト繋がりでお世話になっている「red-wing」さん、「かみさ」さん、「toshi」さん、「kenji」さんも皆様わざわざこの日このときのために遠路遥々お越し頂いたのであった。こりゃもう気合が入らないわけがない。やったるでぇーっ!いいとこ見せたるでぇーっ!.....とはいえ、気合入りすぎて空回りの先走りはヤバかろうからそこはそれ、落ち着いた大人の走りでいこうかと。
 なにはともあれ、第一の目標は「完走」にあり。途中リタイヤなんぞは持っての他。せっかく応援に来てくれている方々の為にも、最後の最後まで応援して頂くためにも、最後までコース上に存在していることを最重要課題にすると肝に銘じたのであった。

 サイティングラップなどはなく、いきなり予選順位順にマシンがグリッドに並べられていく。もちろんスタート方法はル・マン式。コースサイドに並べられたマシンの反対側からライダー一斉にマシンに駆け寄りスタートを切るものである。約30台近くのマシンが一斉にこの狭いスペースから走り出すのであるから、こりゃもう朝の交通渋滞よろしくって感じであろう。スタート直後の混雑の中でいかに他車と絡まず自分のポジションをキープしていくかに序盤戦の運命が掛かっているといって過言ではあるまい。

 相変わらず霧雨がちらちらしている。当然路面もハードウェットでまぁこちらにしてみれば願ったり叶ったりではあるのだが。
 Jr号をチーフメカのまーべりっくが支えている。ぴらっちが傘を差してあげている。コースの反対側、即ちこちら側には殿さまがヘルメット着用準備万端、緊張の面持ち...かどうかはスモークシールド?!ゆえに定かではないが、ただひたすらにその時を待っている。応援に駆けつけてくれた面々も心なしか気のせいかいくぶん表情が硬くなっているような気がした。これから始まる大レース〜♪に、みな何を思い、何を期待し、そして何を得ようとしているのだろうか...。それは、チェッカフラッグをくぐったときにはっきりするであろう。とにかく今はそのことだけを目指そう。その為の一歩を今まさに踏み出そうとしている。

 さっきまでけたたましく轟いていたものがシーンと静まり返り、コース上には不気味なまでの静けさが訪れていた。しかしその漂う空気は今にも弾け飛んでしまいそうなピンピンな緊張感が充満していた。
 いよいよスタートの時間が迫ってきた。パラソル差していた人もコースサイドへ退去して、現在マシンとそれを支えるクルー。そしてコースを挟んで反対側には戦士たるライダーがその時を待っていた。
 スターターが合図の日章旗を片手にスタートラインの傍らに立った。そして・・・

 振り下ろされた。

 各ライダー、一斉にマシンに駆け寄り、跨り、同時にクルーが後からマシンをお酢♂押忍押す――っ! 
 全30台弱のマシンが所狭しと1コーナーへ向けて猛然とダッシュ。
 どこ?どこ?どこ?殿さまはいずこ?どうか他車と絡まないように(祈)
 中盤に埋もれながらもクレバーに自分のポジションをキープしながらまずは序盤を駆け抜けていった。うまいぞ、うまい。
 さすがに狭くて短いコースだけに、あっちゅーまにバカっ速のトップに周回遅れにされてしまったが、そんなこたぁ気にしない。あくまでも自分らのペースで自分らの三時間先のチェッカーを目指すのみ!

 その後も順調に周回を続けていく殿さま。周りではスッテンコロリン相変わらず転げまわっているマシンも目立つ中、まずまずの序盤戦ではないだろうか。
 持分の約半分ほど消化した頃に、殿さま、いきなりピットインしてくる。
 ん?!なんだ?マシントラブルか?!頭に不安が過る。
 しかし、なにごとかクルーと話した後、すぐさまコースへ復帰していった殿さま。一体どしたの?監督に尋ねてみると、「15分経過のサインボードを出したら、何事か?と先走って入ってきちゃったようです〜(笑)」プププ...なにげに御茶目な殿さまなのであった。ま、なにより何事もなくよかったよかった。

 ホーム前で戦況を見守っている時に、ふと傍らのばたやんと顔を見合わせて「今の周回、異様に戻ってくるのが遅くなかった?」どうやら見えないところでなにげにプチコケやっていたようだ。しかし影響はかなり少なく全く問題はない。
 そうこうしているうちに第1ライダーの担当30分間が終わり、2番手のJ太へバトンタッチ。彼に「アウトラップだけは気を付けてね」と声を掛け、背中をポンポンと叩いて送り出した。まずは先鋒の殿さま、お疲れさん。

 考えてみたら、J太はこのレースの前週の土曜日に初めて我らのJr号との対面を果たし、その土日の練習走行だけでこの日のレースに臨んだ。恐らく今回のレースに際しJrで一番のハードスケジュールとそして一番のプレッシャーを感じていたのはもしかしたら彼、J太だったかもしれない。まだまだ荒削りな面を垣間見せるが、なんのなんの、なかなかイケてるではないの。ちょいと心配だったのでしばらく走りを見守っていたがこれなら大丈夫と、次の出番の準備を整えるためにパドックへ戻る。
 ヘルメットやらグローブを持ってみんなのところへ戻る途中、自分らの順位を確認するためにデータ集計している場所へ行く。そこのモニターに映し出されている順位表のデータが忙しなく変動していた。
 どれそれ?自分らのポジションを確認してみる。
 .....9位。
 上等、上等!
 ニコニコ顔で応援団のところへ歩みより、近くにいた誰だったかに報告した。
 .....んが、ふとコース上へ目線をやったその先には.....

 J太の非常に目立つ蛍光イエローのツナギが止まっている?!
 一体なにごと?!どしたの?!やっちゃったの?!
 押し掛けしようとしたものの、どうやらカブらせてしまっているようでエンジンを再始動できないでいるようだ。そのままピットへ向かって押し歩いてきた。コースを横切りそのままピットへ放り込むと、すぐさまチーフメカのまーべりっくが駆け寄り各部のチェックをし押し掛けを試みる。するとすぐにエンジンは息を吹き返し、J太は再びコースへと戻っていった。ま、ご愛嬌、ご愛嬌と。

 それからしばらくは平穏な時が流れていた。相変わらずコースコンディションはヘビーウェット。空からの雨粒は強弱をつけながら路面を濡らしている。しかし天候のベクトルは明らかに終息に向かっているような、そんな気がする。しかしそんなこととは関係なく、熱い走りにはアクシデントが付きもの。コース上、そこここでドンガラガッシャンやっているのが目に映る。あぁ、神よ。我らに幸運を!
 監督から「あと三周でライダーチェンジします」「らじゃー!」
 いよいよ私の出番。今までこのコースで無転倒なだけに、そろそろここらでくるのでは?!なんて不安も過るが、えぇぃっ!ままよ!気合を入れて、ヘルメットを被り、グローブをはめて、準備万端。あとはJ太が戻ってくるのを待つばかり。
 「あっ!」誰かが指を指した。
 「あ・・・」

 J太、最終のS字侵入でコケ・・・

 すぐにマシンを起こし、そのままピットに向けて押してきた。
 私も慌ててピットロード入り口まで走って向かった。
 ピットイン。
 マシンを受取る。
 見渡しても大した損傷はないように見えた。
 エンジン再始動。マシンに跨り、第3ライダーコースイン。
 ピットロードを駆け抜けて、アウトラップに気を付けて、いくぜっ!フルスロットル!!

 あら?!あらら?!ダメだこりゃ!

 シフトペダルがクランプ部から空転してしまい、かなり上部へ来てしまっていた。これではシフトアップ・ダウン時に足をステップから離して操作しなくてはいけない.....。
 ピットストップのロスを考えたらこのまま持ち時間を走り切ってしまおうかという考えが頭を過ったので1周試しに走ってみた。しかしとてもライディングに集中できたものではない。
 すぐさまピットに駆け込んだ。
 あらら?メカさんどこどこ?!
 ちょいと居場所を通り過ぎてしまった私。
 すぐに状況を説明し、ペダル調整をしてもらい、改めての闘い開始!Go!

 コースレイアウトは、狭く短いこのコースの中では南の方角の海に向かって右半分が比較的直線部分が長いいわゆる外周路。残りの左半分がとにかくパッシングポイントが少ないインフィールドというコース設定となっている。
 スタートラインを過ぎるとすぐに左45度にカクっと曲がり海へ向かってほんの少しの直線。ここを4速全開...吹け切りはしないが。そして再び90度左ターン。ブレーキングはきっかけ程度で思いっきり左へ寝かし込み、ほんの僅かに存在するクリップの縁石をかすめてそのまま4速全開。このコースで一番のハイスピードコーナーである。ちなみに、外側にエスケープゾーンはほとんどなし。レース前のブリーフィングでも「あそこは危険ポイントなので、あまりがんばんないように。下手すると最悪海へダイブすることになりますので...」だと。脅かすなぃ!
 フルスロットルで前車のラインを見つつ、よしインが開いた!と思ったらそのまま突っ込め―っ!頭を入れてしまえればこっちのもんよ。大外からは余程がんばんないと直線スピードに劣るJr号はリスク大であり、それこそ「海の藻屑」になってしまう恐れあり?!またしても周遅れ出現。よし、こいつもここで抜いておこう!と思いイン側が開くのを待っていたら、あらら、そのままインベタで入られてしまい、その間に大外から何台かに抜かれていってしまったり.....。たまに失敗したりして。

 その高速左コーナーをクリップから4速全開で立ち上がるとこのコース最長の”なんちゃって直線”が次に控える。海岸線に平行なこの直線の次は左180度ターン。このコースで一番の低速コーナーとなる。ハイスピードの後の超低速。くぅ〜痺れるね〜♪いわゆるブレーキング競争、突込み合戦となるわけだ。私は4速から2速まで落として入っていく。いつもここは朝の通勤ラッシュ状態になっている。道路交通情報の事故情報で大賑わい。アウトからかぶしていくマシン。インに強引にねじ込んでいくマシン。結果、ドンガラガッシャン、と。一度は、おっ?!またしても渋滞だ...と思案しているところへ私の後方大外から速いマシンが突っ込んで行った。ん?!なんとなく嫌な予感がしたのでその時は敢えて自分は突込み合戦に参加しないで様子を見守った。案の定、2,3台が絡んで...ふぅ〜危ないところだった。戦列を離れ寝転んでいるマシンを尻目にその横を無事に立ち上がっていった。そう、当然自分も下手すると絡む恐れもあるのだが、そこはそれレースである。行かねばならぬ。毎周チャンスと見るや意を決して私はとりあえずその団子の一番イン側に飛び込んでみる。ちょいと無理するとリアが左右ににゅるにゅるにゅるとスネーキングするのだが、まぁ気にしない。ウェット路だけに直線部分でしっかり減速済ませてから周りの状況と前輪の挙動に注意しながら寝かし込む。
 抜きどころの少ないこのコースで唯一のパッシングポイントとして、ここでの突込みと、その前のハイスピードコーナーを設定した。あとはなるべく無理はしまい、と。
 さて、その極低速コーナーを思いっきり2速に半クラ当てながら立ち上がる。
 私は今までの長いような短いようなバイクライフの中で今回のようなミニバイクに携わったのは正直初めての事といっても過言ではない。だから今は現場で実際にやってみて慣れていくしかない。普通、このような極低速コーナーならば1速まで落として立ち上がっていくのが常識だと思っていた。ところがそれだとすぐに針はレッドに飛び込むわ、あまりにシフト操作が忙しなく、なんだか疲れるだけのような気がした。それだったらと、2速に半クラ当てて立ち上がってみたらこちらの方が楽でしかも私としては速かったように感じた。だから以後はずっと2速立ち上がりでこのコーナーをクリアしていったのであった。もしかしたらタブーなことなのかもしれないが、まぁ、許してたもれ。

 さて、その極低速コーナーを立ち上がったらすぐに2速から3速へ蹴り上げて次の右へダイブしていく。
 とある時、数周に渡って自分の行く手を阻むあれはKSR80。音を聞いているとどうにもこうにも低回転域でエンジンがボコついている。下から回転がついていってないのがよ〜くわかる。よしよしこれなら簡単にパスできるな。ただインフィールドは無理しないで、例の直線域でいっとこう。
 よし、後についた。
 そのまま後につく。つく。つく。
 .....あれ?離された。ありゃりゃ...。
 よし、もう一回!.....玉砕。
 どうも高回転域になると目覚めるエンジンのようだ。となると80ccだしね。
 ん〜、邪魔だなぁ。抜けないでいるところに、あそこでならと。
 極低速180度への突込みですぐ後にピタリとつける。
 行くぜ、立ち上がり!
 相手KSR、立ち上がりでエンジンボコつく。
 その隙に次の右のイン側へフロントタイヤをねじ込む!
 よっしゃ―っ!成功!!

 うわっっっ.....

 大ボケ〜〜〜シフトミスして失速。その外からかぶされ敢無く玉砕〜とほほ。
 いやなに、もちろん次の周にはこの手でパスしたことは言うまでもない。

 さて、その180度ターンから右コーナーそしてそのまま次のヘアピン状に回りこむ右コーナーへ向けて3速全開!マシンを右へ傾けたままスロットル全開にする為に、結構ここでコケて、長らくマシン滑走しているマシンも見受けられた。
 3速吹け切る前に続くその右コーナーへ進入。回り込んですぐに左へ切り返し、ドライだったらここのフルバンク時からスロットル全開でスピード乗せていくところだが、なにせ路面はウェット。なるべくバンクさせないように努める。
 常に寝かさないように注意していたのだが一度、後に付かれた速いマシンを振り切ろうと気合諸ともそのコーナーに入っていったらペタンとフルバンクさせてしまった。次の瞬間、フロントが外へズルっと。幸いにもたまたま膝でつっかえ棒のように支える形となりなんとかスリップダウンは免れたのであった。
 正直言って唯一覚悟した瞬間だったということは内緒の話である。

 さてこの先がフィニッシュライン前の最終S字への進入である。手前の左コーナーを3速半クラ当てて全開立ち上がりほんの短い直線の後、まず左、すぐに右、そしてもう一丁左で立ち上がる。ここも結構なクラッシュポイントで多重クラッシュもかなり見受けられた。あぁくわばらくわばら。
 その後はフィニッシュラインに向けて3速を全開にさせ、ほんの少し右へカクっとバンクさせるようなコーナーもどきがある。ここのクリップ部が曲者で、時としてイン側のパイロンがマシンやライダーと接触してコース側に倒れてきたり...。私は一度そこで、タイヤバリヤーとして置いてあるでっかい4輪のスリックタイヤに前車がヒットさせたらしく、そのスリックタイヤ、コース上へコロコロコロと...。即ちそれは私の目の前。オレはタイヤだぁ―っ、文句あっかぁ―っ!と通せんぼしているようだった。勿論かわせたからここでこうしてのほほんと書いていられるのだが、もしまともに激突したら、恐らく我々の初陣はそこで幕を下ろしていただろう。ホント、冷や汗ものであった。
 と、この曲者をやり過ごせば、めでたし、フィニッシュラインとなる。
 もちろん周回しているわけだからフィニッシュラインとはいえ、フィニッシュは3時間後である。故に、フィニッシュライン手前でそれまでの3速から4速へシフトチェンジ。フルスロットルで短いストレートを経たあと前述のハイスピードコーナーへ飛び込んでいくのであった。

 お先のライダー二人が厄を祓ってくれたおかげか?!私は極めて淡々と予定を消化することができた。とにかく他のマシンと絡むことだけを最大限に注意しながら走った。路面はまだまだウェットながら、残念ながら?天候の方は少しづつ快方へ向かっているような気がした。
 「15分」...ピットサインが経過時間を知らせてくれる。
 「L3」
 「L2」
 おっ?!あっという間にあと2周でライダーチェンジか。30分なんてあっという間だな。なんとか無事に走りきれたぞっと。
 「L1」...あらら?見間違えたか?
 「L1」...あれれ?次も?「P」にならず、入れない私...。何かあって、まだ入るな、ってこと?あれこれ頭を巡らせたが、ようやく出た.....「P」
 はいよっ!ピットロードの先に殿さま待っている。バトンタッチ!
 勢いよくJr号はコースに戻って行ったのであった。
 すかさず、ぴらっち、「すんませ〜ん。サインボードの表示間違っちゃいました〜」ははは、ご愛嬌。

 走行も2度目ともなると余裕すら。順調そのものの殿さまは確実着実にラップを重ね自分の持ち時間を無難にまとめあげ、J太へ繋いだ。ひとまずお疲れさん、殿さま。
 次なるJ太も舞い上がりの一回目の走行とは雲泥の差。落ち着いてこちらも着実にラップを重ね、上出来上出来。残るは、おいおい私次第?微妙なプレッシャーか?!

 長いようなあっという間のような3時間。このまま終えてしまうのは惜しい気もするが、スタートあればチェッカーはあるもの。ここまできたら無事に走り切りたい。
 とはいえ、やっていることはレースだもの、自ずと順位っつーものは気になるところである。最後の出走前に、順位表のモニターに目をやる。

 現時点、「11位」

 その前後をチェックすると、10位とは5ラップ差。そして12位とは1ラップ差。
 ん〜、上は狙うには無理があるし、ということはポジションキープといこうか。ましてや1ラップ差なんて、ほんのちょっとしたトラブルで逆転の可能性もあるわけだ。
 故に、監督殿に「12位のマシンが追い上げてきたらボードで知らせてね。」とお願いしてJ太から受取ったJr号で最後のコースへと出ていったのであった。
 ただ、このとき殿さまからのアドバイス。「コース上、ほとんどラインは乾いてるのでレインだとかなり辛いかも。結構にゅるにゅるくるので気を付けて」というありがた〜い御言葉を頂いたのであった。「良きに計らえ〜」と。

 ど〜りで.....今までのウェット路面でドライタイヤを履いて大人しく我慢の走行を強いられてきたバカっ速マシン群がいきなり目覚め元気に暴れ始めたのであった。ちょいと気を抜くと、右から左から、インからアウトからぶち抜かれていく。こうなったらレインタイヤだからとか言っているバヤイではない。張り合うつもりはないが絡みたくない。チンタラ走っているとすぐに周回してきてラップされてしまう。つまりこちらもできるだけ速いペースでラップしてなるべく出くわさないようにしたいのであった。
 たまたま速いマシンの後について走った時につくづく感じたことが、ラップ遅れの処理のウマさだろうか。途中までは順調に追随できていてもラップ遅れが分岐点。速いマシンはいけるとなったら躊躇なくスパッといってしまう。その後の私はなかなかそうはいかずもたもたとラップ遅れに引っ掛かる。しばらく時期を逸しているうちに次の速い集団が襲い来る。ん〜、そこいらへんが今後の課題だなぁと痛感する。

 いよいよもってコース上はドライに。
 どの程度消耗しているのかわからないJr号のタイヤを不安に思いながらも「いったれぇーっ!」の気合と共に、特に例のハイスピードコーナーはもしかしたら「かめぇーっ!」とか叫んでいたかは定かではないが...(笑)。それでもやはりここまできたらコケたくはない。レインタイヤを少しでも温存する為に、なるべく濡れているところを選んで走った。水溜りもわざわざ突っ込んでいった。でも、もうほとんどコース上は乾いてしまっていた。あらら。
 ん?目の前にはパステルカラーツナギのオネエサマ。確かこのコースに初めて来て、初めて走行したときにはかなり鴨にされていたっけ...。しか―しっ!フフフ...今日この時こそ、その仕返しなのさっ。パスっ!
 .....なんと性格が歪んでいるのやら?

 監督には「いちいちサインボードに頷かなくてもいいですよ」とは言われたものの、なんとなくみんなの思いが込められているそのボードに自らにも言い聞かせる意味も含めて気合を込めて...。
 そしてそのボードが「ラスト5分」を告げた。ついに告げた。物申した。

 「1分」

 チェッカー

 最後の最後まで我がJr号は私をみんなを裏切ることはなかった。

 最終ライダーの特権?よしチェッカー時には何をしてやろう。走行前にあれこれ思いを巡らせていたのだが、いざ目の前ではためくチェック模様の旗を見た瞬間.....


 ・・・真っ白や・・・


 みょ〜に1コーナーの向こう、海の上に広がる真っ白な曇り空が、まるで私の心の中にまで染み入ってきたような...そんな感覚だった。
 恐らく「ふぅ〜〜〜」っと深く息を吐いたのが精一杯だったのかもしれない。
ただ、誰かが撮ってくれてたそのときの写真には、フィニッシュラインを通過した瞬間右足上げてる自分がいた。覚えてない.....アテント?

 クールダウンラップ.....なんだろ?この感覚。無感動?否、違う。でもなにも心に湧いてこないよ。放心状態のままただ淡々とピットを目指している自分。3時間を走りきったあと...耐久レースのゴール後ってこんなものなのか?!

 否、それは違った。
 大いに違った。
 言うなれば、それは私一人のレースではなかったからだ。

 みんなのもとへ戻った。
 みんな満面の笑みを浮かべて出迎えてくれた。
 私はまず最初にシゲ吉監督とハイタッチを交わした。
 口々にお疲れ!お疲れさま―っ!
 私らだけではない、他のチームもニコニコだ。
 みんなみんなニコニコだぁ―っ
 辺り一面に満ち溢れていた。

 私の喜びはみんなのもとへ戻り、みんなと一緒になって初めてジャンジャンと涌き出てきたのであった。みんなの笑顔を見て初めて安堵と喜びの感情が一気に目覚めたのであった。そしてみんなで成し遂げたことを再確認。自分満足、みんな大喜びで更なる喜びが涌き出てくる。

 殿さま、J太...我ら三人、三銃士!.....とりあえずまずは強豪相手に3時間を闘い抜いたライダーを褒め称えよう。
 なにが起こっても安心していられるのはお陰様。心強いったらありゃしない。そんな貴方はJrのギー・クーロン、まーべりっくさまさま。
 次のレースは期待してまっせ〜。Jrのエース。サインボード出しはちょいと御茶目もあったりの、ぴらっち。
 そしてあんたがいなけりゃ始まらなかったこの企画。親愛なるシゲ吉総監督殿にはケツ向けて寝られまい...はて?足向けてだったっけ?まぁいい、次も頼みまっ!

 そしてそして自分らがこの日この時を闘い抜くことができたのは全てみんなのお蔭様。やはり見守っていてくれているだけでなんだかわからないが力が湧いてくる。

 「イコハチ(行こうよ!8耐!)」繋がりのred-wingさん.....次回のグリッドガールに期待してますよっ♪(まだ言うか 爆)
 かみささん.....次はそちらの番ですよん。頑張ってくださいね。写真どもです。
 kenjiさん.....雨の中しかもバイクであんなバズーカ砲(望遠レンズ)を持参頂きありがとです。写真もピカイチ♪(喜)
 toshiさん.....ホント、遠路遥々しかも雨中バイクでのご来場、感謝感謝です。そうそう、まだまだ若いもんには負けられませんね(^。^)v。
 そしていつもの面々、Mにゃんさん.....パパの勇姿を見せられましたね。胎教胎教♪で、お湯はいつ沸かす?(まだ言うか 笑)
 あっちさん.....あそこでの練習走行の時から温かく見守っていて下さっていてありがとさんです。で、今度は皮ツナギ持参でお待ちしてます。
 ばたやん.....サインボード番やら、いろいろお手伝いありがとです。またよろしくです(笑)。ちなみに...惚れるなよ(爆)
 ヨッシー.....今度は是非12Rであのコースを!うわっ、楽しそう...
 ダサMac.....うさぎと戯れるチミの目が・・・(怖)
 そしてレース当日のご来場は叶いませんでしたが、シェイクダウンからずっと影に日向に力強く応援し続けてくださいましたかず♪舞王さま、つきさま。こげな御土産でお気に召されたでしょうか?今後とも叱咤激励よろしくお願いします。
 それからZIPPYさーん!(現在マシンと格闘中のJr第7のメンバー。)早くマシンできあがるといいですね。共に闘える日が来るのを楽しみにしています。
 そしてやはりこ、い、つ(笑)にゃーごやから遥々すぎる応援ありがとう!のぱとらっしゅ。前夜に飲みすぎであれほど潰れていたのに翌朝から生きていられるのは...若さって素晴らしい。またおいでよっ♪

 あと、ネット上で今まで温かく見守ってきて下さった方々にもありがとうを言いたいです。だから嬉しいこと楽しいことは、いの一番に報告しちゃってました。
 ぽこちゃん.....当日は来られずとても無念だったと思います。しかし旦那はそんなカミさんの思いを一身に背負い、一生懸命走り切りましたよ。今更ではありますが、大いに褒め称えてあげて下さいね。そしていつかは最終兵器として.....(笑)

 親バカ御免.....ひとしきり皆様にお礼を言わせて頂いたあとで、もう一人...もう一匹?もう一団?...にお礼を言いたい。
 この日、海開きを当てこんで、隣のビーチで海水浴を極め込もうと画策したからこそ一緒にやってきた我が家族の一団であったが、残念ながらこの天候。敢無く海水浴は断念となったわけだが、しかし仕方なくそこにいるしかなかったという状況ではあったものの、やはり男の子には少なからずDNAレベルで脈々と受け継がれ染み付いているものというのはあるのだろうか?マシンが奏でるエキゾーストノートに自らのなにかが目覚めるのを感じたのだろうか?小雨で靄っている最中、じっとコース上を見つめているうちの長男。カミさんが近くのゲームセンターへ行くか?と誘っても「ここで見てる」と言ったらしい。
 私がホームに戻ってくる度に、みんなが見守る中で一際力強く見つめている小さい目を私は毎周感じながら走っていた。このポイントでこの小さい目からの精一杯の応援があったからこそ、その後の高速コーナーへ気合をこめて突っ込んで行けたというもの。飽きずにずっと見守ってくれていたこのガキんちょには本当に感謝している。名前は「すずか」。男の子だけどすずか。誕生日は8耐決勝日。毎年行っていた8耐にその年は行けなかったからつけた名前。恨みを込めて(嘘)。そんな彼はサッカー少年。バイクにゃ乗らない。乗せない。金掛かるから(笑)

 レース後に、そんな彼からメダルを貰った。
 近所のゲームセンターのクレーンゲームでゲットした金メダル。
 中はチョコレートの、一枚で二度喜べる♪って代物。
 「がんばったからあげるよ」と。
 彼から貰った金メダルは、ポケットの中の温かさで変形していた。
 しかしどんな優勝トロフィーよりも輝いて見えた。

 さて途中何度かおっとっとなこともあったが、そこいらへんはご愛嬌。3時間をみんなで走りきり見事チェッカーを受けられたことをまずは純粋に喜ぼう。そんな無事に初陣を果たした我らへのご褒美は「10位完走!」。おっとどうやら5ラップ差あったはずの上位をどこかでパスしたらしい。これはとんだ棚からボタモチの特典付きであった。おまけに自己ベストが最後の最後で出たらしい.....32秒前半。良いお土産ができたぞっと。
 となると、途端に欲が出てくるのも人情かなと。惜しい!シングル。ま、これは次回に果たしてもらおう。

 闘い終わり、祭りも終わり、あたりでは慌しく撤収準備が始められていた。
 そんな中、うちらは浮かれ気分でしばらく写真撮影会。J太がボソッと呟いた。「まるでアイドルになった気分♪」ははは...今日だけはあんたがヒーローなのさ。
 ひとしきり撮影が済んだところでうちらも片付を始めた。私も汗やら雨やらで湿りきってしまった革ツナギを早く脱いでしまいたかった。もう、ぐしょぐしょ。前を走っているマシンが水溜りであげる水飛沫でもうなにがなにやら。

 しばらくすると表彰式が始まった。
 上位入賞チームの歓喜の声がこだまする。
 完走だけでもこんなに嬉しいのだから、あそこに立てたらどんな気分になるんだろう。いつかはあそこに!をこのとき心の中に誓ったのであった。
 そんなもうすっかり他人事の表彰式を遠目で傍観していると、順位順に表彰されていくその順番が.....あらら?自分らの10位をもコールしている。
 「10位。サーキットのくらげJr!」
 てへへへ.....照れながらも前へ出て何やらガラスの盾をもらっちまった。思わぬところで更に良い気分。もう天にでもどこへでも飛んでいけ―っ
 オリンピックの金メダルのように、噛んでみた。ガキッ!...歯が欠けた(大嘘)
 再びひとしきりの撮影会?を済ませた後、汗と涙と鼻水とヨダレと...の結晶である(汚)栄光の盾を、シゲ吉監督どのへ手渡した。そのうち部屋の中を盾やらトロフィーで足の踏み場もないくらいに埋め尽してあげようと約束を.....した覚えはないので念の為。

 さてこれでJrの初陣は見事完走10位という理想の形で終えることができたわけだが、しかしこれで終わりではない。始まりであーる。
 更なる飛躍を目指して、次戦は10月に再びこの場所で繰り広げられるのである。ライダーはバトンタッチして、ぴらっち・まーべりっくと噂によるとシゲ吉監督自ら走るというこのお三方で目指せシングルなのであった。
 果たして次回はどんなドタバタが待ち受けているのであろうか.....楽しみのような心配のような。ま、例えどのようなハプニングが待ち受けていようが、うちのJr号は無敵だぜぇぇぇぃ♪いぇ〜〜〜ぃ!

 さ、まだまだ全ては始まったばかり。
 飽くなき挑戦は続くのだ。
 とはいえ、ボチボチのんびりまいろうぞ。
 そう、いつものように、くらげのように、ゆらゆらのんびりとね。

03,7,18
written by cow-boy