目指せ、入院天国?!.....
さっ、気を取り直して参ろうぞっ!
さて、そんなこんなな血で血を洗うドタバタ劇(笑)もあり〜の、毎日拷問のような回診があり〜の、トドメに入院1ヶ月でのなんとも腑に落ちない皮膚移植の手術があり〜の...とまぁ、さんざん痛い目に遭ってきたわけだが、その植皮手術後はこれをお読みの読者の方にとっては非常に残念に思うだろうが、概ね平穏無事な日々が訪れていた。
左足首患部の感染症の心配もなくなり、ベロンちょしていた傷も皮膚移植により塞がれ、あとはその植え付けた皮膚が完全に定着し、包帯を取って開放できたら、はい!おしまいっ!そこまでいけば、あとはめでたく「退院」を待つばかり。
ここまできてようやく先が見えてきた。
病院内の空調はまさに快適で、病院着一枚で過ごせる。
当初、予断を許さなかった入院患者の身としてのオレは建物の外へ出るような事は全く必要がなかったしできるわけもなかった。
毎日単調な時のリズムの中に身を置き、怪我による入院=負の自分をプラスマイナス・ゼロにする事だけに尽力する。
「目的達成!万歳!おめでとう!自分...」
・・・でもそれは自分としては何も得るものはなく、「普通」に”戻った”だけのことである。前述の通り、プラスマイナス・ゼロになっただけのことであるわけだ。
極論を言えば、無駄な時間を過ごしただけである。
でもでも、それでも、せっかく痛い思いをして、普通の生活上では体験できないようなこともあって、それならば無駄を無駄に終わらせぬよう実のある体験とするよう尽力しよう。
よし、今置かれている立場、環境下を今後の自分自身を今度こそプラス仕様とする為にはどうすればいいかっ?!.....このボケボケ・た〜いむの期間中に導き出してみよう!
ま、そんな慣れない事は考えるもんではな〜い!という答えを導き出すのに、1日と掛からなかったことは言うまでもない。
ましてや、このときの教訓を今後の自分に役立てる…?ちゃんちゃら可笑しいぜ!
何故ならば・・・・・
今だにバイク乗ってるし・・・・・
おまけに相変わらずコケてるし・・・・・
トドメに骨折してるし・・・・・(02,3,17のこと)
でしょ?!まるで進歩なし。プラマイ・ゼロ...どころか、マイナス仕様か?!これじゃぁ入院生活と変わらんってばさ〜。おまけに・・・・・
・・・そんなことは、威張ることではな――いってか(爆)
まさかこの時の自分が、この先も何の進歩もなくまた同じようなことの繰り返しをしているアホなオヤジとなっていることなど夢にも思っていないわけで、健気にも自分自身に前を向かせようとアレコレ考えながら四苦八苦していたわけだ。
そう、まるで季節感のない病院の中で、ジタバタとね。
ん〜〜青いね〜若いね〜・・・
そんな中、ふと気付く。
・・・・・クリスマスが近付いてるなぁ。
そう、入院当初の「秋」は、いつの間にやら「冬」に代わっていたようだ・・・
目の前の大通りの街路樹の葉がすっかり燃えつき、散り切り、オレの心そのもののように寂しげで切ないもののように感じられた。人々の服装は日に日に重くなっていき、風が冷たくなっているのだろう、コートの襟を立て、背を丸くして足早に通り過ぎていく。
・・・・・ってなこたぁ、ちまちまメソメソ考えてたって仕方ない。
ケラケラ笑って、ケセラセラ〜♪
若者特有の思考パターン?!
今を楽しく面白く〜♪
ま、幸い、あとは痛そうなことはなさそうだしね。
そう、目指せ、入院天国――っ!
試練な日々.....
オレの傷も表面的にはだいぶ癒えてきた頃、自分自身で徐々に歩く練習を始めた。
松葉杖を突きながらの歩行はできたし、やっていた。ところが、松葉杖を外すと真っ直ぐ立ってさえいられない。今まで一切荷重を掛けていなかった為に左足首の感覚というものが全くなくなっていたのであった。下手に体重を掛けるとなんだか足首から先が、ぐちゃっと潰れてしまいそうな錯覚にとらわれていた。
自分ではそんな状況に、焦らない焦らない…、と努めて平常心でいようとしていた。が、しかし、そんなすぐに元通りになんかなりゃしないとわかっていても普通の生活においては当たり前の事ができないというもどかしさに、焦りにも似た感情にとらわれ始めていた。
「?!もしかしたらこのまま自立歩行できないのではないか?!」
「今まで当たり前のようにできていたことが、なんでできないんだ?!」
「悔しいぜ・・・」
傷も癒えてきた自分は遅かれ早かれ、じきに病院を追い出されるだろう。
そんな時に、松葉突かないと歩けないなんて、こんな身体のままでは日常生活はきっと辛いものになるだろう・・・・・そう思ったオレは、是が非でも退院の日までには松葉杖なしで歩けるようになっておかなくては。これを今の自分自身に課す大命題とした。
それからというもの、毎朝午前6時の検温後、大部分の人が二度寝に入るところを1人起きだし、松葉杖を突きつつもエレベーターで1Fに降り、誰も往来のない閑散としたロビーを通り抜け、そのまま病院の外へ出た。
目の前にはだだっ広い病院の駐車場。その向こうには、毎日病室の窓から眺め下ろしている大通りがある。その大通り際まで距離にして優に100m以上はあるであろう。そこをなるべく松葉杖を突かないようにしてその大通り際のフェンスにタッチして再び戻ってくる・・・そんな事を雨降り以外の毎日ずっと続けていた。
病院内にいれば常夏...もとい、常春?なのだが、外はすっかり厳寒の「冬」であった。薄い病院着ではかなり凍えそう。それでもなんだか意地張っちゃって、ブルブル震えながら、そしてそれらを薄っすらと汗をかくくらいまで毎朝恒例のリハビリに励んでいたのであった。
そうこうしているうちに、少しづつ、ほんの少しづつ.....回復していく自分の左足。そんな自分のパーツをニンマリしながら眺めているのであった。
もう少し、あと少し!不思議なもので少しでも先が見えてくると結構人間というのは頑張れるものなのだ。それまで塞ぎこんでいた気持ちは、ちゃっかりと全開満開ハッピーハッピー・・・
やっぱ元来が楽天家のオレであったとさ。
さ、もうひと踏ん張りさっ♪
突撃――!風呂取り合戦.....
当然傷口の開いていた前半戦1ヶ月間は風呂など入れるはずもなく、連日かなり気持ち悪い思いをしていた。もちろん、毎日「清拭」つまり蒸しタオルでの各部フキフキはしているのだが、それでも汚れなどは完全に落ち切れるものではない。
不思議なもので、毎日例えジッとしていて汚れなくとも汗などかかなくとも人間の身体は新陳代謝とやらで、汚れやら何やらズンズン積もるぅ〜♪.....まるで雪だるまのように、退院時には垢で1,5倍サイズに?!髪の毛などは1〜2週間に1度程度は洗ってくれはするものの、しかしすぐにガビガビ〜な状態に・・・。
いやホント、入院生活で一番望んだこと。それは勿論。。。
思いっきり風呂入りてぇぇぇぇぇぇ――!
。。。であった。
入院生活1ヶ月目に皮膚移植手術を行い、その術後の経過も良好。植皮ヶ所も大分身体に馴染み、傷口が塞がりつつあったある日のこと。。。
ようやくオレに入浴許可が下りた。
まさに天にも昇る嬉しさだった。
と、丁度同じ頃、同室の室井さん他、オッサン連中にも入浴許可が下りた。
そこの病棟での入浴上のシステムは、どうしても大勢の入院患者の入浴をさばく為に、お一人様15分間の入浴時間なり〜。
ムムム…これでは、ザッとシャワーを浴びるくらいしかできまいて。
で、入浴希望者は、毎日大体夕方5時頃にアナウンスと共にナース・ステーション前に掲示される『入浴時間割表』に氏名と希望時間帯とを書き込むという仕組みになっている。
そんなたかだか15分間のみのシャワーでチマチマ入ってられるか――っ!
そこでオレらは考えた。。。
「1人で15分間ならば、人数まとめてみんなで入れば湯船にお湯だって貯められるでぇ〜♪」
。。。ということで、オレと同室の室井のオッサンと、あと他病室のオニーチャンとの3人で45分間の入浴時間をゲットしたのであった。これで湯船にお湯を貯め、のんびりと湯に浸かる事ができるようになったのだぁ〜♪い〜湯だなっ♪
それからというものの、すっかりそんな”のんびり極楽入浴”に味をしめたオレらは、夕方5時が近くなると、病室にいても耳をそばだて、室内のスピーカーに全神経を集中させているのであった。
それはもちろん。。。
「お知らせします。本日入浴希望の方は・・・・・・」
ダ―――――――――――ッシュ!!
もちろん、分散させる事なく、3人分の入浴時間をひとまとめに確保する為であった。
その3人の中では比較的動けるオレが特攻隊長役であった。
松葉杖突き突き・・・しまいにはその松葉を肩に担ぎ、エッホエッホと駆けていく・・・ヾ(・・;)ォィォィ
もちろんそんな姿を看護婦さんに見つかったら怒られるのは言うまでもない。
中にはその夕方5時前になるとナースステーション前で時間割表が掲示されるのを待っているフライング野郎の出現でなかなか優雅な入浴タイムを確保するのにも熾烈を極めてきたのであった。
まぁ、そんな入浴時間争奪戦も、ひまひまな入院生活においてはある種イベントのようなものであったのだろう。結構ドキドキなスリルを味わいながら楽しんでいたように記憶している。
フフフ…ここんとこ連戦連勝(^。^)v
今日も、いい湯だな〜〜〜っと♪
真夜中の淫靡な誘惑?!.....
病棟の消灯時間は午後10時。
すると、とりあえず各自ベッドに納まりカーテンを引き、TVに見入る人、本・雑誌を読む人、はたまたすぐに寝に入る人、と様々である。オレはどちらかというと寝つきが良かったため後者であった。すーぐに、ぐーすかぴぃ〜…(笑)
そんな折り、消灯時間になると決まって隣のベッドの室井のオッサンと斜向い窓際の遠藤くんがごそごそと室外へ出ていく。どこへ行っているのやら・・・?・・・なんて思っているうちにオレはまたしても fall asleep 状態・・・ぐーすかぴぃ〜.。o○
あるとき、そんな寝入りっぱな、夢の世界への心地よい誘(いざな)いに素直にその身を任せていたとき、無粋にも隣の室井のオッサンに叩き起こされた。
なにごと?!訝(いぶか)しげに思いながらも手招きされるままにオッサンの後を付いて行く。
するとオッサンはオレを病棟ロビーへと導いたのであった。
ん?!なんじゃこいつらは・・・?!
そこには同室の遠藤くんやら、他室の若い衆やら数人が集っていた。
なんでも”ぱーちー”してるんだと。
この日は数日後に退院が決まっている遠藤くんの送別会なんだそうだ。それで最後くらいは顔出せ―っ!とばかりにオレを叩き起こしてきたのだそうだ。
ロビーのテーブルの上にはどこで仕入れてきたんだか、ケンタのチキンやら美味そうな食い物が並んでいる。
席に座ると、オレは手渡された。。。
「はい、これ!.....明日血液検査ないね?」
・・・か、か、缶ビールやないけ――っ?! (-_-;)
「お、おまえら、見つかったら強制退院やぞっ!」
「なにやっとんじゃぁ――!!(怒)」
・・・なんて言うわけもなく。。。
「おっ、悪いね〜。いただきま〜すっ(はぁと)」
そんな自分の素直なところって大好き〜♪ヾ(・・;)ォィォィ
(^O^)/C□☆□D\(^_^ )カンパーイ!
いいね、いいね、あんたら夜な夜なこげなことやっとったのね〜
なんだよ〜、今までそんな寝てる場合じゃなかったじゃんかよぉ〜…
まぁ当然いつも <<ピー>> が持ち込まれているわけではなく、誰かの退院が近付くと、そいつがその前に外出許可をもらうなどして街へ出て、そして諸々仕入れてきてみんなに振舞うという掟があるらしい。
ん〜、良い掟だ(爆)。
あれやこれや、ひまのひまの鬱憤を晴らすかのように楽しい一時にすっかり夜も更けていく・・・。オレもすっかりそんな掟の恩恵に授かって、久しぶりの <<ピ―>> に、 <<ウヒョ―>> だった。
アリャリャ\(^o\) (/o^)/コリャリャ
ρ(*^_^*)ρシャカシャカ ρ(^o^)ρツクチャカ
(* ̄0 ̄*)ノ口 をーい、オヤジッ!もう一杯!!
そんな和やかな雰囲気の集いに、突如緊張が走ったっ!!
!!―― Caution Alarm ――!!
警戒警報発令!!
そんな強張った顔をした我々の後ろには・・・・・
般若さん(「病院へ行こう・5」参照のこと)が立っていたのであった。
そう、紛れもない、「般若」さんの命名はこのときから始まったのに他ならない。その顔はまるで「般若」の形相であったからだ。暗闇から懐中電灯を手に現れた深夜勤務の「般若」さん。その下向きの懐中電灯からの下方より煽られおぼろげな間接照明がお美しいお嬢様の御顔を、それは「般若の形相」に見せていた。恐らくそれは自分らがしていることへの後ろめたさがそのように感じさせていたのかもしれないが・・・。
「あんたたち、こんな夜更けに何やってるの?!」
「まさか、アルコールなんか持ち込んでないでしょうね―?!」
「?!・・・・・・・・・・・・・・・」
・・・やられた―っ・・・正直観念した。
ところが、缶 <<ピ―>> の空き缶が並んでいた場所には、いつの間にやら。。。
缶コーヒーやら缶ジュースの空き缶に摩り替わっていた・・・?!
どうやら近付きつつある「般若」さんの存在にいち早く気付いた輩が必要最小限の動きで、ササッと用意していた防衛対策を施していたのであった。
「まさか〜?そんなことするわけないじゃないですか。」
「ほら、ここにあるのは全部缶コーヒー、缶ジュースですよ〜♪」
「・・・・・ならいいんだけど。とにかく早く寝てくださいね。・・・」
怪訝そうな顔をしながらも「般若」さんはナースステーションへと帰っていった。
一同・・・・・・・・・ホッ・・・・・
翌朝、あ〜ぁ夕べは盛り上がったな、とすっきり爽やか清々しい朝を迎えていたところに、つかつかと若い看護婦さんが歩み寄ってきた。
その足は隣のベッドの室井のオッサンの前で止まった。
「はい、室井さん。今度の再手術の為の今日は尿検査をします。」
「このカップに適量を入れてきて下さいね。」
オレと室井さん顔を見合わせて。。。
「・・・・・・・・・・・・・・・(やばい?!)」
WCへ行って入れてきたその検尿カップに鼻を近づけクンクンしている室井のオッサン。
そして、そうこうしているうちに。。。
・・・・・ゴクリっ・・・・・
なにをすんじゃぃ――――っ!
なにやらその当時に、健康法だか何だかで「自分の”シッコ”を飲む」というものがあることは知っていたのだが・・・・・
それを目の前で見るのは始めてだったのだ。
それはそれはオレにとってとてもセンセーショナルなことだった。
「フムフム…大丈夫だな。」
とは、室井のオッサン。
しばらくすると、そう指示した若い看護婦さんがそのカップを受け取りにきた。
・・・・・クンクンクン・・・・・
おもむろに顔を室井のオッサンに近付けたその看護婦さん。
もしかしたら、夕べの集いの事が申し送りかなにかで・・・・・?!
・・・・・クンクンクン・・・・・
「室井さん、お酒くさぁ〜〜〜〜〜〜ぃっ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・(バ、バレたか?!)」
「な〜〜〜んてねっ!ビックリした?ビックリしたぁ〜?」
「な、な、なに言ってんだよ〜。」
「別に何もないんだからビックリするわけないじゃん」
「アハハ・・・ハハハ・・・・・・」
・・・・・んなろっ
小娘にまんまと弄(もてあそ)ばれたオレと室井のオッサンであったとさ。
凸(`、´メ)
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