新たなる挑戦
〜 GPz400F 〜

The Final
 いよいよ、本格的にバイクライフを開始して何となくどういうものなのか分かってきた頃、そろそろ当初の目標を目指してみようかと思い始めた。GPz400Fを最初の相棒に選んだ理由、目的。それはバイク乗りとしての更なる飛躍の為のもの。限定解除。排気量無制限のどんなバカでかいものでも2輪車である以上は運転できる免許。今で言うところの大型2輪免許。。。いよいよ本懐を遂げる時がきたとばかりに、早速準備に取り掛かる。
 当時はまだ今のように教習所で取得できるシステムはなく、全て免許試験場での実技であった。ということは平日の真昼間をフリーにできる人でない限り一生涯取得の道は閉ざされたままである。今日の大型2輪免許取得を教習所でできるようになった事はとても喜ばしい事だと私は思う。誰にでもその思い、志がある限り、平等であるべき事だと思うから。
 というわけで、どう考えてもそうそう平日休みを取れる筈もなく数少ないチャンスをモノにするほか手はない事は誰もが同じ事。そして考える事も同じ事、練習場で特訓してから試験に臨む。
 仕事が終わり次第、比較的自宅から近い某練習場へ週に2〜3回ほど通う日々が続いた。一応その練習場では教習付きの請負コースというものを受講した。ある一定金額の中で受かるまでというもの。バイクはまだ教習間もない頃はポンコツCB750F、赤ベコGSX750・・・今思うとさぞかし乗り辛かったであろうと思う。ある雨の教習中、私の乗っていたCBはエンストなどしてセルボタンを押す度にビリビリっとくる。リークしているのだ。勘弁してくれよ〜とただでさえ雨降りの教習でブルーになっているところに、まさしく泣きっ面に蜂ってところだろう。

 さて、教習の方だが、基本的な取りまわし。。。バイクの引き起こし、押し歩き等は男の私には雑作もない事ではある。そして乗り出すわけだが、やはり普段の相棒が400ccの中では大柄だと言ってもほんまもんのナナハンにはかなわないわけで…。早速その車体の質量・重量に翻弄される毎日が始まった。とにかく全てにそれらを感じ、トルクを持て余し、バイク自体をも持て余す。
 練習所のバイクのアイドリングは少々高く設定されているようなので、クランクや、S字などではしっかりとリアブレーキを使ってスピードを殺して臨まないとパイロンなぎ倒し、コース突破、という憂き目に遭う。今思えばそういう対処法が頭に浮かぶのだが、その当時はどうしてもそこまで頭が回らず、がんがんオーバースピードで進入していき収拾が付かなくなり、とっ散らかってしまう事になる。そのバイクの特性に慣れるまでの間はまさに暗中模索、手探りで探っているのだがやはりこういったことは身体で覚えろ、とばかりにとにかく黙々と乗り込んでいった。しばらく乗り込んでいけば誰でも慣れというものはやってくる。そのナナハンなりの特性というものをある程度会得してくればシメタもの。。。

●走り出してしまえばある程度の低速でも2速ホールドのままやり過ごす事ができるということ。
 あとは。。。
●バイクの挙動を自分の手の内で転がしておく為にもリアブレーキの使い方を会得すること。
●そのガタイから、余計な事をしない限り車体は安定しているので、それを保つ為にも人車一体を念頭に入れ、意識してニーグリップを心掛けること。
 ここは、How toものではないのでこれ以上詳しくは述べないが、えんやこらやっているとこういった事が徐々にわかってくる。そしてそれらのコツがわかってくるとナナハンに跨る事が楽しくなってくる。自分自身のバイクに対するスキルチェックをするだけの余裕が心にできてくる。8の字、ぐるぐる360度ターンなどなど。何もしなくても面白いくらいにバイクは安定し勝手に曲がっていくような気さえする。

 ここで一つ危ないエピソード。教習中の安全確認はオーバーアクションくらいが丁度良いとよく言われるが、ただアクションだけではホントに危ない事もあるということ。ともすると安全確認のための安全確認になってしまうことも。。。ある時、波状路走行、終了して一旦停止、左右後方安全確認の上走り出す…。ところがその時の私は”つもり確認”アクションのみだった為、実後方確認を怠って右方へ走り出てしまったのだった。そこへ隣の課題コースから生徒にお手本を見せるべく教官が真っ直ぐやってきたのである。いきなり目の前にカットインしてきた私に驚いたのであろう、フロントブレーキをロックさせ思いっきり転倒してしまった。大事には至らなかったが、私としては申し訳ないやら情けないやら・・・で穴があったら入りたかった。コース内にはいろんな教習バイクが練り走っているので気をつけなくては。。。肝に銘じたハプニングであった。 

 さて、課題コースをある程度習得したらいよいよコース上にて法規走行の教習に移行する。ここまでくれば技術的なものはもう問題なくこなせるようになっているわけで、あとは交通法規に則った走りを心掛けるステージになったわけである。踏み切り通過、坂道発進等は殊更に問題なく進む。あとは信号のある交差点などへの進入タイミングが難しい。これから通過する交差点の信号機が青だからとそれなりのペースで進み行くと目の前で黄色になりそこらへんの判断が微妙なところだ。判断を間違えると信号無視を取られるし、ちんたらいくとメリハリがないと判断されるし。こればかりは試験当日の運を祈るしかない。あとは直線は思いっきり、元気よく!バイクに振り回されているのではない、バイクを振り回している!ということを印象付けさせる事が重要であると私は思った。

 ここらへんまでくると、いよいよ試験場での本番アタック目前となるわけである。試験場のコースレイアウトをしっかりと頭に叩き込み、イメージトレーニングは欠かせない。
。。。というわけで、機は熟した。

 ドキドキドキドキ・・・当日の朝、自分の心中は恐らくこの擬音で埋め尽されていた事だろう。やれるだけのことは全てやった。あとは運を天に任せていってみよう!
 府中試験場に到着した私はそそくさと2輪試験場の待合所に入りその時を待つ。時間になると彼方より神様か、はたまた閻魔様が自分らの前に降臨してきた。思わず拝みたくなる衝動に駈られたが、その口から発せられる御言葉を一部始終ありがたやぁ〜ありがたやぁ〜と崇め奉る自分。さぁいってみよう。
 人数の程は恐らく20名くらいはいただろうか。一人づつ呼ばれて外へ出ていく。その時の自分の心境はまるで死刑執行を待つ囚人のようなものに近かったかもしれない。

試験1回目。。。

 やはり初めての試験という事で緊張していたのだろう。課題コースをヨタヨタと走り、外周へ出たところで「ハイ戻ってー!」のアナウンス。あっという間の試験一発目であった。試験管曰く「バイクに乗られちゃってるよ。もっと元気よく乗ろう。」というものであった。
試験2回目。。。
 前回の指摘事項を肝に銘じて臨むはずが、この日はかなり体調を崩しており風邪で熱を出しているという劣悪な状態で臨んだ試験。結果は良いはずもなく、今思い返してもどこをどう走ったのか全く印象に残っていない。無事に行って来れただけでも良かったというものか?
試験3回目。。。
 ここまでくると、ある程度余裕が出てきて、試験の雰囲気などをむしろ楽しみ始めた頃である。さぁ今回はどこまで進む事ができるか?!なんて事を思いながらかなりお気楽だったように思う。続けていればいつかは受かる!そんな開き直りの境地がそのようなお気楽さを生んでいたのだろうか。
 結果はまたしても・・・。しかし名誉の為に言っておくが、かなり惜しいところで進めた。後半のどこかでパイロンにほんの少し接触してしまったらしい。教官に「あそこでパイロンに触っていなければねぇ、パーフェクトだったのに…。惜しかったねぇ」などと言ってもらえたのであった。これに気を良くした私はいよいよ王手!次こそは勝負の時だ、と気合が入ったものであった。
The Final。。。
 さていよいよ佳境に入ってきた。これを最後のステージとすべくかなり気合も入っていた事であろう。とにかく今まで苦労してきた事、習得してきた事の集大成というつもりで、慎重且つ大胆に、直線ではアクセルワイドオープン!を心掛け、自分の力の120%を発揮できたということでかなり満足できる走りを披露したと思った。途中、何事もアナウンスされることなく無事に課題をこなし、無事に発着点へと帰還できた。安全確認の後、試験官の元へ歩み寄る。いくつか注意を受ける。あそこの寄せが甘いとか、どうとか…。おや?これはやばいか?!と一瞬不安になったのだが、「はい、これを持って、交付所へ行くように。」と何やら書類を渡され・・・一瞬???状態だったが、あ、合格したのね。。。
 すると周りから拍手が沸き起こる。そうなのだ、ここでは合格した者へ、同じ志を持つ者としてその健闘を称えみんなが拍手をしてくれる。今までは自分はする側だったが、この日は私がされる番。うれしいやら照れ臭いやらで会釈をしそそくさと自分の荷物を持ち免許証交付所へ立ち去っていった。確かこの日の合格者数は私を含めて4名程だったような気がする。とにかく狭き門だった頃。
 さぁこれで晴れて限定解除ライダーの仲間入りを果たす事ができた。この爽快感、そして安堵感、何とも言えない開放感。さぁさぁさぁ!次は?次は?次は?!自分自身の飽くなき目標を定める為、次なるターゲットを模索し始めたのだった。若い力には自分自身を奮い立たせ揺さぶり突っ走るに足るエネルギーが充満している。パワー全開!どこまでも☆いつまでも★


 これら一部始終に付き合い、傍らで見守り、時として励ましてくれていたであろう相棒のGPz。現在でもたまに街中で見掛けると、ふと、あの時の事が走馬灯の様に頭の中を駆け巡っていく。とても頼り甲斐のある相棒であった。アイツとの宿命の出会いがあったその時までの間、ずっと我が家の駐車場に鎮座していたのであった。

'01,04,27
written by cow-boy



お・し・まぃっ




 

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